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日ソ共同宣言基礎に平和条約 「2島先行返還」も視野に交渉 日ロ首脳会談

 安倍晋三首相は14日、訪問先のシンガポールでロシアのプーチン大統領と会談し、1956年の日ソ共同宣言を基礎として、平和条約締結を加速させることで合意した。同宣言は領土問題に関し、平和条約締結後に歯舞(はぼまい)群島と色丹(しこたん)島を日本に引き渡すと明記しており、今後、両首脳が「2島先行返還」も視野に交渉を進めていく可能性もある。

 首相は11月末からアルゼンチンの首都ブエノスアイレスで開かれる20カ国・地域(G20)首脳会合の際に会談を行うとともに、年明けにもロシアを訪問し、プーチン氏と改めて会談する考えを表明した。

 会談は通訳を交え、2人だけで行われました。首相は会談後、記者団に対し、「この戦後70年以上残されてきた課題を次の世代に先送りすることなく、私と大統領の手で必ずや終止符を打つという強い意志を完全に共有した」などと述べた。

 1875年の樺太(からふと)・千島交換条約で千島列島全体が日本の領土として確定しているにもかかわらず、日本政府は「千島列島放棄」を盛り込んだ51年9月のサンフランシスコ平和条約を不動の前提とした上で、「択捉(えとろふ)、国後(くなしり)は千島にあらず」と主張。北海道の一部である歯舞、色丹を加えた「北方四島」を「固有の領土」とみなし、返還を求めてきた。しかし、こうした主張は歴史的にも国際法上も道理がなく、領土交渉は行き詰まりを見せていた。こうした中、歯舞・色丹の「2島返還」論が90年代以降、何度も浮上している。

 日ソ共同宣言には、平和条約締結後に「歯舞群島、色丹島を日本に引き渡す」と明記されているが、択捉・国後などには言及がない。安倍首相も会談後の記者会見で「4島返還」に言及しなかったため臆測が広がったが、菅義偉官房長官は15日の記者会見で、「北方四島の帰属問題を解決し、平和条約を締結するというのが、わが国の一貫した立場だ。この点に変更はない」と強調した。

「2島返還で平和条約」は絶対やってはならない 日ロ首脳会談 志位和夫「日本共産党」委員長が会見

 日本共産党の志位和夫委員長は15日、国会内で記者会見し、安倍晋三首相が14日のシンガポールでのロシアのプーチン大統領との会談後に「日ソ共同宣言を基礎に平和条約締結交渉を加速させることで一致した」と述べたことについて、「会談の中身が分からず発言に即したコメントは難しい」とした上で、「少なくとも2点は強調しておきたい」として、日ロ領土問題に対する日本共産党の基本的立場を述べた。

 第一は、「歯舞群島と色丹島は北海道の一部なので『2島先行返還』はありうることだが、その場合は、中間的な条約と結びつけて処理することとし、平和条約は領土問題が最終的な解決に至った段階で締結すべきだ」ということだ。志位氏は、「2島返還で平和条約を結ぶことは絶対にやってはならない。ここが肝心なところだ。平和条約は結んだら国境線の画定となる。それ以上の領土返還交渉の道は閉ざされる。歴代日本政府の立場の自己否定となり、ロシア側の主張への全面屈服になる」と強調した。

 第二に、志位氏は、60年以上にわたり日ロ領土問題が前進しなかったのは、「国後島・択捉島は千島にあらず。だから返還せよ」という日本政府の主張が「歴史的事実に照らしても国際法的にも通用しない主張だったことにある」と指摘し、「このことを正面から認め、領土交渉の方針の抜本的な再検討をすべきだ」と強調した。

 そして「日ロ領土問題の根本は、『領土不拡大』という第2次世界大戦の戦後処理の大原則を踏みにじって、『ヤルタ協定』で『千島列島の引き渡し』を決め、それに拘束されてサンフランシスコ平和条約で『千島列島の放棄』を宣言したことにある。この戦後処理の不公正をただし、全千島列島の返還を正面から求める交渉を行ってこそ、解決の道が開かれる」と語った。

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